F-WELD plus
F-WELD plusはアーク溶接により発生する残留応力を高速に計算する理想化陽解法FEMソルバーと専用プリ・ポストF-WELDのバンドル製品です。
F-WELD plus 製品概要
F-WELD plusでアーク溶接後の残留応力を超高速計算
溶接時、入熱局部はトーチからの熱で融解および周囲が膨張後、冷却に伴う収縮とともに塑性ひずみが生じたまま凝固します。これにより、部材内部に応力が残留してしまい、耐久性や寿命に悪影響を及ぼします。
F-WELDは、大規模モデルに対して超高速にアーク溶接による残留応力を計算できる「理想化陽解法FEMソルバー※1」専用のプリポストプロセッサで、アーク溶接モデルの作成や設定、解析結果の表示を直感的に操作することができます。
F-WELDをお使いいただくことで、理想化陽解法FEMソルバーで短縮した時間をプリ・ポスト操作で損なうことなく、モデル作成から解析結果確認までを実行できるというメリットがあります。
※1 理想化陽解法FEM(IEFEM)ソルバーとは
大阪府立大学 柴原研究室が開発した、大規模構造物の溶接変形・残留応力の解析が可能な手法を用いたソルバーです。
GPGPUを活用することにより解析の超高速化にも成功しています。読売新聞に掲載の記事はこちら。
F-WELD plus 製品詳細
F-WELD plusはアーク溶接モデルの作成・ソルバー起動・結果表示ツール
F-WELD plusが持つ機能は以下の通りです。全てF-WELD plus内の操作で実行可能です。
- 各種3DCADデータフォーマットに対応※2
- 母材等のメッシュ生成
- 作成困難、手間のかかるビードの簡単メッシュ生成
- 入熱パスの自動設定
- IEFEMソルバー用各種条件設定フォーム
- IEFEMソルバーの実行(ネットワーク起動も可能)
- 解析結果ファイルの軽量化および即時読込み
- 解析アニメーションやグラフの表示
- その他溶接モデル作成に役立つ機能
-
作成が難しいメッシュ例
-
手間のかかるメッシュ例
-
実写画像をトレース
-
ビードモデリング機能
-
解析結果のアニメーション化
-
プロパティデータ入力
-
作業ウィンドウ上でノード選択
-
入熱パス自動設定
-
パイプ周りの溶接
-
タンデムアーク溶接
※2 対応する3DCADフォーマットは以下の通りです。
フォーマット | 拡張子 |
---|---|
ACIS | *.sat |
Parasolid | *.x_t |
IGES | *.igs |
StereoLithography | *.stl |
AutoCAD DXF | *.dxf |
STEP | *.stp |
Catia v4.x | *.mdl, *.exp, *.dlv |
Catia v5 | *.catp |
Pro/E | *.prt, *.asm |
Solid Edge | *.par, *.psm, *.pwd, *.asm |
NX | *.prt |
SolidWorks | *.sldprt, *.sldasm |
JT | *.jt |
F-WELD plus 前提条件
F-WELD plusは超高スペックPC要らず
理想化陽解法FEMソルバーは、CUDA環境で開発したGPU(グラフィック演算ユニット)を利用した超高速計算プログラムであり、ソルバーを起動・計算させるにはNVIDIA社製のGPU※3を搭載したPCが必要です。
ただし、F-WELD plusはネットワークを通じて理想化陽解法FEMソルバーをリモートで実行させる機能がありますので、NVIDIA製GPUを搭載したサーバPCにソルバーを置き、NVIDIA製GPUを搭載していないクライアントPCにF-WELD plusをインストールしてお使いいただくことができます。
F-WELD plus対応環境 | |
---|---|
OS | Windows10,Windows11 |
CPU | Intel x86互換64bit CPU (Intel 64, AMD 64) |
メモリ | 8GB 以上 (推奨 16GB以上) |
ハードディスク | ソフトウェア使用時100GB以上の空き |
グラフィック | OpenGL 対応 ※推奨 ワークステーション向け OpenGL 4.2以上 |
理想化陽解法ソルバー動作環境 ※理想化陽解法FEM(IEFEM)ソルバーの動作環境に従ってください。 参考に弊社で確認した環境を以下に示します。 |
|
---|---|
OS | Windows10,Windows11 |
CPU | Intel Core i7 6800K, Intel Xeon E5-2609 v2 |
メモリ | 64GB |
ハードディスク | 1TB |
GPU | NVIDIA GeForce1080Ti, NVIDIA Quadro K4000 |
CUDA | CUDA11.0 |
※3 現行ver.の理想化陽解法FEMソルバーはCUDA11.0が必要ですので、11.0に対応したGPUをご用意いただく必要があります。
CUDAに対応したGPUは以下からお調べいただくことができます。
CUDA対応GPU一覧:https://developer.nvidia.com/cuda-gpus
F-WELD plus+IEFEM_時間比較
使用PCスペック
・CPU: Intel Xeon E5-2609 v2 2.5GHz 2.5GHz
・メモリ: 64GB
・記憶媒体: HDD
・GPU: NVIDIA GeForce GTX 1080Ti (メモリ11GB)
鋼管熱処理(F-WELD plus+IEFEMと陰解法の時間比較)
モデル概要
水で冷却しながら鋼パイプに焼入れを行う状況を想定。
以下の条件を用いる。
① 熱はパイプの外周に10mmほどの幅で入れる。
② 熱源を速度 1 [mm/s]でZ方向にスライドさせていく。
③ 片端固定
④ 自然対流(vs 水)
解析条件
・入熱設定は、最高温度が700℃前後になるように任意に調整した。
・水冷を表現するため、熱伝達率は対水の値を用いた。
(a, b) F-WELD plus+IEFEM2019年度版,NVIDIA GeForce GTX 1080Ti
(c) 陰解法
解析結果
F-WELD plus+IEFEM
熱伝導過渡解析+熱弾塑性過渡解析
解析時間:45分
熱伝導過渡+熱弾塑性過渡解析がセットで実施される。IEFEM+GPGPUによる収束計算の効率化+高速化により、PCのメモリ消費も非常に少なく、75600要素でも約10倍の速度が出ている。
陰解法
熱弾塑性解析
解析時間:約420分(約10倍)
CPU8コアによる並列計算でも、いくつかの原因(要素数、温度差、変形量などが関係する)により収束計算に長い時間がかかった。PCのメモリも多く食う。
鋳物冷却(F-WELD plus+IEFEMと陰解法の時間比較)
モデル概要
金型から抜いた直後の鋳物を空気中で冷却させる。
① モデルは、JSCASTのサンプルデータを用いる。
② JSCAST初期温度分布データで非定常熱伝導解析を実施しステップ温度分布データを得る。
③ IEFEMと陰解法ソルバーで熱弾塑性解析を実施して計算速度を比較する。
④ 底面固定
⑤ 自然対流(vs 空気)
解析条件
熱伝導過渡解析を実施して得たステップ温度分布を使用。
(a, b) F-WELD plus+IEFEM2019年度版,NVIDIA GeForce GTX 1080Ti
(c) 陰解法
解析結果
-
(a) 共通温度(熱伝導解析)
-
(b) F-WELD plus + IEFEM :残留応力
-
(c) 陰解法:残留応力
F-WELD plus+IEFEM
熱弾塑性過渡解析(180step)
解析時間:3.5分
F-WELD plus+IEFEMで熱弾塑性解析を実施させた結果、解析時間は3.5分であった。
陰解法との単純比較で約160倍の速度が出ている。
陰解法
熱弾塑性解析(180step、塑性変形あり)
解析時間:570分(約160倍)
約570分かかった。
解の収束のための繰り返し計算に多くの時間が必要となる。